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2008/08/02

憧れの渓へ-金峰山川-

20080801000

僕だってフライフィッシャーのはしくれだから、その渓のことは知っていた。
かつてイワナ釣りの聖地といわれ、その美しい渓相が全国的にも有名な銘川。
千曲川源流、金峰山川。
僕もいつか行ってみたいと思っていた憧れの渓だ。

直前に決まった久しぶりの平日休み。木曜の仕事が夜遅くに掃けた後、僕は毛鉤を数本巻いて深夜の東京を抜け出した。とりあえず関越を飛ばしながら行き先をアレコレ考えているうちに、ふとこの渓に行くことを思いついた。
ここは言わずと知れた人気河川だから、きっと土日は厳しい。
東京に越して来てから初めての平日釣行の行き先としてはもってこいだ。
結果として遠回りになったけど、僕は上信越自動車道の佐久ICでハンドルを左に切り、千曲川を横目で眺めながら141号を南下した。

午前中に、同じく千曲川水系の相木川で6寸程度のアマゴとイワナと遊んだ後、僕は馬越峠を超え川上地区へ抜ける。川上地区に来たのは2年振りかな。当時も夏で確か西川に行ったっけ。ここから目指す金峰山川までは目と鼻の先。僕はのどかな千曲川上流部の田園風景の中を走り、午後2時頃、金峰山川の畔にたどり着いた。

徹夜明けで少し疲れていたけれど、憧れの渓を前に昼寝をする選択肢は僕にはない。日帰りだしね。初めてで勝手が分からないけれど、適当に入渓ポイントを探し林を抜ける。そして川に降り立った僕の目に、その素晴らしい風景が飛び込んできた。
目の前に広がる青い空と両岸の渓畔林。適度な数と大きさの白い花崗岩。そしてその間を豊富な水が流れ落ちる。足元の水は恐ろしくジンクリアなのに、ちょっと深くなるとその流れはエメラルドグリーンに変わり、白泡が輝きを放っている。どっかの雑誌で見た写真の通りの、そして思い描いていた通りの素晴らしい渓相だ。
先週訪れた渓がブナの原生林と一体となった自然の美しさとすれば、この渓はまさに渓自体が美しい。白い岩の配置と水の流れは、まるでカミさまの仕業みたいだよ。

平日だからなのか、夏の日中だからなのか、幸運にも他の釣り人の姿は見えない。
気分良く6.5Xのティペットに#11のピーコックパラシュートを結んで、僕はカミさまの渓を釣り上がった。
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途中、キセキレイが僕をアタマハネ(笑) 


しばらく釣り上がって分かったことなのだけど、この渓ではサカナはヒラキに付かないようだった。水の透明度が高い分、ヒラキに定位するのはサカナにとって都合が悪いのだろう。日中は岩周りや落ち込みの白泡付近で身を隠しているに違いない。
稚魚放流があったのか、掌サイズの小さいイワナが数尾釣れたのだけど、まともなサイズなイワナには中々出逢えない。
まだ日が高いし、水の透明度からしてイワナの警戒心も相当高いのだろう。日ごろの人的プレッシャーが高いのも容易に想像された。こっちとしても水がクリア過ぎて、毛鉤がとても見づらいのだ。やれやれ、こりゃ、イブニングまで難しいかもしれないな…。
そう思い始めた頃、こんな流れにたどり着いた。2008080101

落ち込み辺りに倒木がありなかなか良いポイントだ。
しばらく流れを見ていると、倒木の下の深みから良いサイズのイワナが現れ、後方へ浮上しながら水面でライズするのが見えた!いわば追い食いライズ。そいつは、捕食を済ませるとまた倒木の下へ戻っていく。流れがクリアだから、偏光グラス越しにその動きが良く見えるのだ。
恐らく倒木の下に身を潜め、下流のスカムラインに流れる捕食物を見つけてライズしたに違いない。倒木下流のレーンは素直な流れでドリフトもさほど難しくなさそうに見える。これは僕にもチャンスが有りそうだ…。
僕はイワナに感づかれないよう身をかがめて、毛鉤を#14のグレイフォックスパラシュートに結び変える。目立ったハッチはないし、こういう時は毛鉤よりドリフト重視だ。
右岸からのアップクロスになるけれど、先週友人と話をしたキャストを意識する。リーダー先は15フィート弱にして、ティペット部は意識的にターンオーバーさせない。スリークォーターで逆U字に、フライラインとリーダーの結び目をソフトに着水させるイメージだ。その先にはスラックを入れたい。
一投目…。上手く流せたと思ったんだけど、出ない…。毛鉤に気づいていないのか。
二投目…。これもダメ。うーん、毛鉤よりこっちの存在に気づかれたかな。
そして三投目…。
毛鉤が同じように白泡をトレースすると、倒木の下からヤツが現れた!
まるでさっきのシーンのリプレイを見ているような同じ動きで後方の毛鉤に襲い掛かると、そのまま水面下へ反転。
僕はその瞬間を見定めて、右腕を跳ね上げた。
グッとロッドがしなり、エメラルドグリーンの流れにイワナの水しぶきが上がる。
思いのほか引きが強く、何度も水面下へ潜ろうとするイワナ。
僕のウィンストンがバッドから絞り込まれている。僕はその度にロッドグリップを強く握りしめ、腰を落としてその動きを制した。
倒木周りに入り込まれると厄介なので、無理せず少しずつ寄せる。
最後にひと暴れした後、観念したソイツがツツーとジンクリアな水面をと滑ってきたところを、僕は膝を付いてネットで掬った。
よし!

Kinpuiwana001
9寸弱のキンプイワナ。今シーズン一番良く引いた(クリック拡大)

2008080103
体躯・鰭とも申し分なしだ。

僕にとって記念すべき金峰山川のイワナ。
キャッチするまでのプロセスにも満足できたし、まわりの雰囲気も相まって最高の気分だったな。徹夜明けの疲れもこれで吹っ飛んだのは言うまでもないね。

その後、イブニングが近づくにつれ、サカナの反応も徐々に良くなっていき、僕はキンプでのイワナ釣りを心行くまで満喫した。この渓は見た目の美しさだけでなく、傾斜も適度で歩きやすいし、上も開けていてストレスなくキャストできる。ここはまるで渓流釣り、僕にとってはフライフィッシングの為にあるような渓だ。
特にイブニングは圧巻で、大岩周りから何尾もイワナが浮上して毛鉤を素直に咥え、その大きな鰭でロッドを絞ってくれた。同じ石周りから2尾も25センチが飛び出したり、今までどこに隠れてたんだという位で、久しぶりの平日釣行を楽しむには最高な幕切れだったな。

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イブニングの1尾。どのイワナも鰭が大きく引きが強い。

イブニングの帰り、車へ戻る道すがら話をしたキャンプ場のおじさんの話では、「明日からは人多くなるよ」とのこと。この美渓を気に入らないフライフィッシャーはいないだろう。
このクリアな渓にたくさんの人が入れば、更に難易度は上がるはずだ。
今日が平日で良かった…。
そんな思いで千曲を後にした東京までの帰り道。野辺山・清里を抜けたところで、突然、そして予想通り、鉛のような眠気が僕を襲ってきた。
安全な路肩に車を止め、ウィンドーを開き、シートに横になる。
車内に吹き込む高原の涼しい風が頬に優しい。
それから程なく、僕は深い眠りに落ちていった。
僕にとっての金峰山川。それは噂に違わぬ、そして憧れていた通りの素晴らしい渓だった。カミさまに感謝だな。もちろん、カミさんにもだ(笑)

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コメント

金峰山川、僕も行きたいと思っている渓ですが、愛知からは日帰りはキツイんですよねぇ~
クリアな流れに、良いイワナ、いいなぁ~
今週、行けてないから余計に羨ましいですよ。

投稿: | 2008/08/03 21:36

洋さん、こんにちわ。
積極的に夏の渓にお出かけで、しっかり満喫されてますね!
金峰山川は一度だけ行った事があります。
文章のとおり花崗岩とクリアーな水が空気まで綺麗にしてる…そんな流れでしたね。

ボクはサッパリ釣れなくて、でも足下からスーっと大きなイワナが逃げていったのを案内してくれた友人に話すと、彼はしっかりイワナたちを釣ってはるか後ろで笑ってました。
また行かれたらブログ楽しみにしてますよ♪

投稿: Rolly | 2008/08/04 12:37

洋さん、こんばんは~!!

夏はやっぱり源流andイワナですね!
それにしても鰭の張ったカッコいい魚体だコト・・・(羨)。
こんな一尾に出逢えたなら徹夜の疲れも吹っ飛びますね。
北陸はいよいよオロロが飛び回る季節。
ボクも源流に照準を合わせて暑い夏を乗り切ります!!

投稿: ita-gon | 2008/08/04 20:30

稲さん、こんばんは!
確かに愛知から日帰りだと、ちと厳しいですね。
という訳で東京から行ってみました♪

だけど、ご家族との旅行もかねて
八ヶ岳辺りに一泊すればOKですよ。
そういや、金峰山の上流にもキャンプ場があったなぁ…
とそそのかしてみます(笑)

投稿: | 2008/08/04 21:25

Rollyさん、毎度です!
子育てを楽しみつつも、なんとかちょいちょい
遊ばせて貰ってます♪

この日は、少なくとも数時間は先行者無し、それと
夕方のイブニングにあたったのでいい釣りができましたが、
基本的に金峰は難しい渓だと思いました。
ということで、次行くときも、できれば平日狙いですネ(笑)

投稿: | 2008/08/04 21:32

ita-gonさん、こんばんは!
やっぱり夏は山に潜ってのイワナ釣りに限りますね。
まぁでも、金峰はあくまでも千曲川の源流部ってことで、
今回僕の入った区間は渓沿いに道があって、車からすぐですし、
それでいて渓相は抜群、いいイワナもいるので、
高巻き・ヘツリが嫌いな軟弱フライフィッシャーには
ピッタリでしたよ(笑)

北陸の源流、いつか僕も行ってみたいなぁ。
といいつつ、2年前の夏にご一緒したとき、
ヌカカに散々やられたことを思い出しました(笑)

投稿: | 2008/08/04 21:48

洋さん、こんばんわ!
イブニングにかけてのジキル&ハイド氏のような替わりっぷりが文面から容易に想像出来ます。
キンプはもうすっかりご無沙汰の当方ですけど、なんだかウズウズしますね(笑)!
と、言ってもなかなか良い釣りは出来ないんだろうなー。
何はともあれ、満足のいく釣行が出来たようで羨ましい限りです。
こんどは未開の最上流部へのランデブーを計画しましょうかね?
多分キツイよー(笑)

投稿: わん | 2008/08/04 23:51

か、家族旅行も兼ねてかぁ~~~~~うむむむ・・・

投稿: 稲 | 2008/08/07 17:10

洋さんども!
良い釣りされてますねぇ
金峰山川は、
私には、まだ名前だけの憧れの渓です。

もうちょっとチビが大きくなって
以前のように八ヶ岳辺りに家族で
いけるようになったら・・・訪ねてみよう
かな~

投稿: ばびい | 2008/08/08 18:26

わんさん、毎度です!
イブニングはね、もうとっても良かったです♪
人はいないし、涼しいしね。

きつーい未開の最上流部、行きますか。
でも、もうちっと涼しくなってからかな(笑)

投稿: | 2008/08/09 12:18

稲さん、八ヶ岳は家族旅行にオススメですよ。
僕は遅い夏休みだけど、家族と月末に行く予定です^^

投稿: | 2008/08/09 12:21

ばびいさん、こんにちは!
この時期は、日中は家族と過ごして、朝と夕だけ
渓に立つってのが良いかもしれません。

金峰は、一度は訪れる価値のある渓だと思いますし
他にも周辺にいい渓が沢山ありますので、是非♪

投稿: | 2008/08/09 12:26

洋さん、こんばんわ!!
トーキョーに行ってから、ボクも八ヶ岳周辺の渓には出掛けるようになりました。昨年と今年も一度だけでしたが、千曲の本流には行ってます。他の支流も少しだけ釣りをしたコトがありますが、いつも期待を裏切られるコトがないので、お気に入りです(笑)でも、金峰山川では釣りをしたコトがないんですよ。確かキャンプ場がありましたよね?この川って。いつかキャンプ&フィッシングがしたいです。洋さんの独演会付きの(笑)

投稿: terry | 2008/08/09 22:53

terryさん、こんばんは!
千曲周辺は、別の水系も含めて良い川が沢山あるので
転戦もしやすくいいですよね。
その分、日帰りでなく、泊まって翌日も釣りが
したくなってしまうのが問題ですが(笑)

キンプは、上流にキャンプ場ありました。
イブニングでいい釣りしたあとの、キャンプで飲む一杯
は最高でしょうね。
いつか行きたいですね。
でも、僕って、騒ぐ仲間を尻目にランタンの灯りと星の瞬きを
見つめながらしっとりと飲むタイプだったはず。
独演会の意味がよく分かりません(笑)

投稿: | 2008/08/10 21:37

八ヶ岳、いいとこですよねぇ~
アウトレットへは以前出没しました(笑)

投稿: | 2008/08/12 22:58

稲さん、こんにちは!
八ヶ岳にはアウトレットもあるんですね~。
僕は行ったことありませんが、休みはきっと激込み
なんでしょうね。

投稿: | 2008/08/16 14:16

こんにちは。
金峰で、きれいで立派なお魚釣れてよかったですね。
私なんぞ、魚が釣れるまで何度も通いました。
真夏の金峰山川は、誰かに見せたくなるすばらしいところだと思います。

投稿: きみ | 2008/10/06 22:05

きみさん、コメントありがとうございます。
このイワナは、プロセスも含め今シーズンの
僕のベストワンだったと思います。

金峰山川、水と岩と空と樹の配置がほんと神様の
造形みたいで、素晴らしい川ですね。
プレッシャーは高くとも、来シーズンも
夏に足を運びたいと思います。
できれば平日に(笑)

投稿: | 2008/10/07 00:14

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